ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカ、そして日本。自由に旅する絵描きマツモトヨーコが、世界を巡りながら出会った人々や自然のありさまなど、旅先での小さなワクワクやドキドキを、ほんのり心温まる文章でつづった。彼女自身が描き留めた、シンプルだが味のあるイラストも満載だ。 彼女が心がけているのは決してぜいたく旅行はせず、自分のペースを乱さないで等身大の旅をすること。好奇心旺盛な彼女の旅には、日本では考えられないハプニングや思わず吹き出してしまうエピソードがてんこ盛りだ。スペインではアメリカおじさんと蚤の市デートをし、ポルトガルでは朝寝坊の宿の主人をたたき起こすハメになる。そしてインドネシアでは結婚式に飛び入り参列、アフリカでマサイの若者に言い寄られたり、無人島のホテルで恐怖体験もした。またおいしいものに目がない彼女は、アフリカで究極のアウトドア料理、台湾で屋台料理にも舌鼓。さらに韓国ではあまりの料理のおいしさに食べすぎてダウンする始末だ。 どこに行っても何かに遭遇してしまう。そんなハプニングも旅のエッセンスに変えてしまう彼女はまさに旅の達人なのだろう。 旅先では必ずスーパーマーケットに立ち寄る、というのもおもしろい。その土地柄が一番表れているので、おみやげを買うのに絶好の場所なのだそうだ。 世界を巡るクルーズ船に乗って水彩や版画教室の講師も務めている彼女。健康診断で血液検査をしたとき、保健婦に「あなたの血は、年中動き回っている狩猟民族タイプだ」と言われたとか。(石井和人)
マツモトヨーコの脱日常紀行
バックパッカーです!と気合をいれないまでも団体旅行でなく最小限の荷物と最大限のわくわくを持って旅に出たことがある人なら、思わず「ああ、わかるわかる」と相槌を打ったり、ぷっと吹き出したり、そんな話に出会えるはず。力の抜けた鉛筆スケッチもこの本の魅力。手元において時々眺めて楽しめる本。
飛鳥新社
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